近年、多種多様な媒体や手法によりWeb広告の活用方法は複雑化しており、また効果を可視化できる特性から、各施策の成果がより重要視されるようになっています。
そんなとき注目したいのが、「広告を誰に届けたか」だけでなく、「どこに広告を掲載したか」という視点です。
今回は、YouTube広告でよく利用されている2つの方法「キーワードターゲティング」と弊社が実施する「GP Contextual Targeting」(以下、GPまたはGP配信) について、それぞれの特徴と、実際にどんな違いが出るのかをわかりやすく解説します。
▶︎Index ———————————————–
1.キーワードターゲティングとGP配信の違い
2.実際の配信における違い
3. まとめ
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キーワードターゲティングとは
Google広告ではキャンペーンの目的に応じて様々なターゲティング手法が用意されています。
そのうちの1つであるキーワードターゲティングは、「どんな内容の動画やWebページに広告を配信するか」指定できる手法です。
これは、Google広告の機能の一つで、設定したキーワードに関連するコンテンツに広告を自動で表示する仕組みです。例えば、「電気自動車」というキーワードを設定すると、「電気自動車の充電方法」や「EV購入ガイド」など電気自動車から関連するキーワードを含めたコンテンツへ広告が配信されます。
つまり、視聴しているコンテンツの“文脈”に合った広告を出すことで、その話題に興味を持っている人にアプローチできるのが特徴です。
特徴:
- 関連する話題に触れている「今この瞬間の関心」に広告を届けられる
- 興味が顕在化している人に届きやすい=すぐアクションする可能性が高い
言い換えると、「今その話題に興味を持っている人」にピンポイントでリーチが可能な、ユーザーをベースとした手法です。
🔗 Google広告ヘルプ キーワードによるコンテンツターゲット
GP配信とは
一方、私たちが提供するGP配信も、「コンテンツの文脈に基づいて広告を配信する」という点では、基本的な仕組みはキーワードターゲティングと共通しています。
ただし、GP配信では、単にキーワードが含まれているかどうかだけでなく、そのキーワードが「どんな文脈」で使われているかや、動画そのものの質・信頼性までを加味した上で、広告の掲載先を精査しています。
そうした機能特性を活用し、ターゲティングから外すべき動画の除外なども事前に行うことが可能です。
例えば、以下のようなコンテンツはターゲティング対象のキーワードと関連性があったとしても配信対象から除外されます:
- 音声だけが再生されやすく、広告が視聴されにくい「ながら視聴」系動画
- キーワードは含まれていても、文脈が本来の意図から外れている動画
- 過激な表現やセンシティブな内容を含む、ブランド毀損リスクのある動画
その上で、ビジネス・経済・ライフスタイルなど、編集方針のしっかりした信頼性の高い動画に絞って広告配信が行われます。
特徴:
- 情報をしっかり消費する視聴者層にリーチできる
- 安全性の高い動画にだけ広告が出せる(ブランドセーフティー)
- 企業イメージを大切にした広告運用に最適
言い換えると、「信頼できるプラットフォームで、興味関心濃度の高いユーザーに広告を見せる」配信手法がGPです。
実際に配信した時に、どんな差が出る?
次に、従来のキーワードターゲティングと、私たちが提供するGPの配信方式とで、配信先コンテンツの質やパフォーマンスにどのような違いが生じるのかを比較・検証します。今回は、自動車関連動画へのターゲティングを想定し、両者に共通の設定を行いました。特に、ブランドセーフティー(=広告が適切なコンテンツに表示されたか)や、広告視聴態度(=視聴完了率、CTR)に注目し、それぞれの手法がどれほど広告主の意図に合った配信ができているかを確認しました。
方法の比較:
検証は、以下の2つの配信パターンを設定し、同一クリエイティブ、同一ターゲット設定、同一予算の条件で実施しました。公平な比較が行えるよう、異なるのは「配信手法」のみとしています。
- パターン1:キーワードターゲティングによる配信
- パターン2:GPによる配信
各配信においては、表示回数・CTR・CPCなどの主要指標に加えて、実際に広告が表示された動画(プレースメント)や、視聴態度に関するデータも取得します。
さらに、配信後には自社の「GP Placement Analytics」*(1) を活用し、プレースメント先のコンテンツ内容を一件ずつ確認・分類。これにより、配信の「数」だけではなく、「質」も含めた評価が可能になります。
このように、単なる数値比較に止まらず、「どのような文脈で広告が届いていたのか」までを踏まえた総合的な検証を行いました。
*(1) 弊社が提供する過去クライアント様で実施したYouTube広告の配信面分析が可能なメニュー
結果:
💡各指標の比較
検証の結果、キーワードターゲティング広告では、表示回数や視聴率といったボリューム指標で一定のリードが見られました。特に、完全視聴率はキーワードターゲティングの方がわずかに高く、ボリューム重視の配信としては、うまく機能していたといえます。
また、クリック率(CTR)やクリック単価(CPC)に注目すると、GP配信の方が高いパフォーマンスを示しました。
実際、CPCで比較するとGP配信の方が低く抑えられており、「とりあえず見てもらう」よりも「反応する」ユーザーを効率的に捉えられていたと判断できます。購買意欲や関心の観点から見ても、費用対効果の高い配信を実現できていたと言えるでしょう。
ボリュームに反芻する形でインプレッション単価(CPM)はGP配信で高騰しています。しかしながら、実態として広告関心層の低いユーザーへの配信を抑制し、選別されたユーザーに的確にアプローチできていたとも考察できます。
💡プレースメントの比較
次にプレースメント実績を分析したところ、キーワードターゲティングでは、車との関連性はあるものの、ドライブシュミレーターゲームコンテンツ(ゲーム解説)が最も配信量としては多く、車を購入する層との関連性には若干疑念の残る結果でした。
さらに注目すべきは、削除・非公開などの理由からすでに視聴できなくなっている動画にも多くの広告が配信されていたことです。
これは、キーワードマッチングの精度や配信ロジックの特性により、文脈とのズレが生じやすいことを示しています。
一方で、GP配信では、広告が自動車関連コンテンツに集中して配信されており、想定するターゲット領域と高い整合性があることがプレースメントレポートから明らかになりました。
各配信の配信量トップ10動画
※上記は集計時点での結果であり、最新の公開状況は変更となっている可能性がございます
GP Placement Analyticsの結果:
当社が提供する「GP Placement Analytics」サービスを用い、各プレースメントの動画タイトルや内容を個別に検索・分類し、実際にどのようなコンテンツに配信されたのかを可視化しました。
その結果、キーワードターゲティングでは、検証対象である自動車関連コンテンツへの配信がわずか3.0%に留まる結果となりました。
一方、GP配信では、実に93.8%が自動車ジャンルに関連するコンテンツであり、意図したターゲットへの的確なリーチが実現されていたことが確認できました。
さらに、キーワードターゲティングの配信カテゴリを詳しく見ると、エンターテインメント系や音楽、個人ブログなど、商材との関連性の薄いコンテンツが多数を占めていました。特に、タイトルや説明文にキーワードが含まれていても、実際の中身がマッチしていない動画が多く、視聴者の興味関心と広告のメッセージが噛み合わないリスクが高いことが示唆されます。
動画のカテゴリごとの広告表示回数割合
まとめ
今回の検証では、キーワードターゲティングは、「特定テーマに興味をもつ人々に広く見せる」という点では効果があるものの、実際に誰に届いているかという点では、不透明な部分や改善の余地があり疑念が残る点が明らかとなりました。
一方で、GP配信は表示回数こそキーワードターゲティングよりやや劣るものの、狙ったコンテンツテーマへの配信で意図したユーザーにしっかりと広告が届いており、クリックなどエンゲージメントにつながっていたのが特徴です。
どれだけ多くの人に見てもらうかだけではなく、どれだけ「届けたい人」にちゃんと届いているか。今回の結果は、そんな視点の大切さを改めて感じさせるものとなりました。